
部下の様子に、変化はありませんか?
- 「最近、あの部下の様子が少し違う」と感じる
- 以前は会議で意見を出していたのに、今は黙っている
- 来期の話をしても、返事は「そうですね」の一言だけ
- 気のせいかもしれないと、つい見過ごしてしまう
そんな変化を見て、「辞めたいと思っているサインでは」と胸がざわついている上司の方もいるはずです。部下の退職は、ある日突然のように見えても、その前に小さな変化が積み重なっていることが多いものです。
結論
辞めたい気持ちは、「発言が減る」「先の話を避ける」「休み方が変わる」といった変化の重なりとして表れやすいものです。
サインに気づいたら、引き止める言葉を考えるより先に、心配している気持ちを伝えて理由を聞くことが大切です。
この記事でわかること
- 辞めたいと思っている部下に出やすい6つのサイン
- 迷い始めから決意までの、段階ごとの変化
- サインを見るときに、決めつけないための注意
- 面談で理由を聞くときの声かけと質問の例
- 引き止めるより先に、上司がしておきたいこと
この記事の目次閉じる開く
部下が辞めたいと思っているときに出やすい6つのサイン
辞めたい気持ちは、言葉より先に、ふだんの様子に表れることが多いです。大切なのは、ほかの部下と比べるのではなく、その部下の「少し前の様子」と比べることです。もともと口数が少ない人が静かなのは、サインではありません。

1. 会議や雑談での発言が減った
前は改善の提案や質問をしてくれていた部下が、何も言わなくなった。会議で意見を求めても「特にありません」で終わる。こうした変化は、職場をよくしようという気持ちが薄れてきたサインのことがあります。
不満を口にしているうちは、まだ職場に期待が残っている状態です。不満すら言わなくなったときのほうが、気持ちが離れている可能性は高いと考えておきましょう。
2. 来期や次の仕事の話を避ける
来期の目標、次に担当してほしい仕事、新しいプロジェクト。こうした話をしたときに返事があいまいになったり、話をそらしたりする。辞めることを考えている人は、守れない約束をしたくないので、先の話に乗りにくくなります。
ふだんの打ち合わせで次の仕事の話が出たときに、以前より反応が薄くなっていないかを思い返してみてください。
3. 休み方や勤務の仕方が変わった
平日に有給休暇をぽつぽつ取るようになった、半休や早退が増えた、定時になるとすぐに帰るようになった。こうした変化は、転職の面接や手続きのために時間を作っている場合があります。
ただし、休みが増える理由は、体調や通院、家族の介護、子育てなど、ほかにもたくさんあります。休み方の変化だけで、辞めたいと決めつけるのは避けましょう。
4. 自分の仕事を、ほかの人にもわかる形にまとめ始めた
自分しか知らない手順を書き出している、共有フォルダの資料をきれいに分け直している、後輩に細かいやり方まで教え始めた。引き継ぎを意識した動きが見えるときは、辞める準備が進んでいることもあります。
もちろん、仕事の進め方を見直しているだけのこともあります。前向きな改善なのか、去る準備なのかは、ほかのサインと合わせて見ていきます。
5. 職場の人との関わり方が変わった
昼食や雑談の輪に加わらなくなった、職場の集まりを断ることが増えた。反対に、急に周りに親切になり、これまで以上に「ありがとう」を口にするようになる人もいます。
気持ちに区切りがつき始めると、人との距離のとり方が変わることがあるのです。
6. 仕事への関わり方が「最低限」になった
頼まれたことはするけれど、それ以上はしない。新しい役割を頼むと、理由をつけて断る。ミスが増えたり、身だしなみや机の上の様子が変わったりすることもあります。
やる気がないように見える態度の裏には、疲れや不満、心や体の不調が隠れていることもあります。態度を注意する前に、まず事情を聞くことを考えてください。
気持ちが揺れやすい節目
評価の結果が伝えられたあと、異動や昇進の発表があったあと、大きな仕事が一段落したあとなどは、働き方を見直したくなりやすい節目です。この時期に上のようなサインが重なったら、いつもより少し丁寧に様子を見てあげてください。

シンパンくんから
サインを見つけても、すぐに「辞める気だ」と決めつけないでね。疲れていたり、家のことで悩んでいたりするだけのこともあるんだ。
迷い始めから決意まで|段階ごとに見える変化
退職の決意は、一日で固まるものではなく、迷う時期を経て少しずつ形になっていくことが多いです。今どのあたりにいそうかを考えると、上司がとるべき動きも見えてきます。
| 段階 | 見えやすい様子 | 上司ができること |
|---|---|---|
| 迷い始め | 疲れや不満がこぼれる | 雑談で様子を聞く |
| 気持ちが離れる | 発言が減り先の話を避ける | 二人で話す時間をとる |
| 準備を始める | 休みや引き継ぎの動き | 変えられることを示す |
| 決めている | 退職の相談がある | 本人の意思を尊重する |
迷い始めの段階なら、仕事の量や担当を少し変えるだけで、気持ちが持ち直すこともあります。反対に、次の職場がもう決まっているような段階では、引き止めの言葉はほとんど届きません。
だからこそ、サインに早めに気づき、迷い始めのうちに話を聞くことが、いちばんの近道になります。
サインを見るときに気をつけたいこと
ひとつのサインだけで判断しない
口数が減った、休みが増えた、という変化がひとつあるだけで「辞める気だ」と考えるのは早すぎます。同じ時期に、いくつかのサインが重なって出ていないかを見るようにしましょう。
思い込みで接し方を変えてしまうと、部下は「疑われている」と感じます。それが、かえって職場を離れるきっかけになることもあります。
心や体の不調が隠れていることもある
表情の暗い日が続く、遅刻やミスが急に増えた、という場合は、心や体の不調が関わっていることもあります。上司が病名を推測したり、決めつけたりするのは避けましょう。
産業医や保健師がいる職場なら、本人の了承を得たうえで、相談をすすめてみてください。そうした窓口がない場合は、医療機関にかかることをすすめるのもひとつです。
辞めたい理由の中に、ほかの社員からの嫌がらせが含まれているなら、上司の聞き取りだけで終わらせてよい話ではありません。本人の了承をとって、人事や社内のハラスメント相談窓口につなぎましょう。
本人のいないところで探らない
辞めるつもりなのかを早く知りたくて、本人の見ていないところで確かめたくなることもあるかもしれません。けれども、次のような探り方は、信頼を大きく損ねます。
やってはいけない探り方
- 部下のSNSや、転職サイトへの登録を調べる
- 仕事のパソコンやメールの中身を、理由なくのぞく
- 同僚に「〇〇さん、辞めるって言ってない?」と聞いて回る
- 休みの理由を、細かく問いただす
- 辞めそうだと決めつけて、仕事や情報から外す
こうした行動が本人に伝わると、迷っていた部下が、それをきっかけに決意を固めてしまうこともあります。知りたいことは、本人に直接、心配している気持ちと一緒に聞くのが、遠回りに見えていちばん確かな方法です。
面談で辞めたい理由を聞くときの声かけと質問の例
声をかけるタイミングと場所
声をかけるのは、忙しい時間帯や、ほかの人がいる場所を避けます。会議室など話が聞こえない場所で、15分ほどの時間をとるのがおすすめです。
「ちょっといい?」とだけ言って呼び出すと、部下は叱られるのかと身構えます。「最近の仕事の様子を聞かせてほしいから、明日15分だけ時間をもらえる?」と、目的を先に伝えておきましょう。

最初の一言は「気になっていること」だけ
面談の最初に「辞めるつもりなの?」と聞くのは逆効果です。部下は答えを迫られたと感じて、本当のことを言いにくくなります。
最初は、あなたが気づいた変化と、それを気にかけていることだけを伝えましょう。
このところ会議での発言が少ないように見えて、どうしているかなと思って。
仕事で、やりにくくなっていることはない?
いえ、特に……。少し疲れているだけだと思います。
そうか。疲れているなら、まずは今の仕事の量から一緒に見直そう。
理由を聞くときの質問の例
辞めたい理由は、ひとつとは限りません。任されている仕事が合わない、量が多すぎる、人との関係がつらい、評価に納得がいかない、家の事情で働き方を変えたい。いくつかが絡み合っていることもあります。
答えやすい質問から、少しずつ聞いていきましょう。
- 「今の仕事で、いちばん気が重いのはどの作業?」
- 「この半年で、やりがいを感じた仕事はあった?」
- 「チームの中で、やりにくいと感じる場面はある?」
- 「数年後、どんな働き方をしていたいと思ってる?」
- 「私の進め方で、やりづらくさせているところはない?」
答えを聞いたら、すぐに反論したり、解決策を出したりせず、「そうだったんだね」と受け止めます。理由がはっきりしなくても、その日は「時間をとってくれてありがとう」で終えて大丈夫です。

シンパンくんから
話を聞くときは、うまく返そうとしなくていいんだ。「そうだったんだね」とうなずいてもらえるだけで、部下は「話してよかった」と思えるものだよ。
「何もないです」と返されたとき
部下が何も話さなかったとしても、面談をしたこと自体に意味があります。上司が自分の変化に気づいてくれた、という事実は、部下の中に残るからです。
数日後に「この前の話、何か思いついたらいつでも聞かせてね」と短く声をかけ、話す入り口を開けたままにしておきましょう。
引き止めるより先に、上司がしておきたいこと
辞めたい理由が見えてきたら、つい引き止める言葉を考えたくなるかもしれません。けれども、言葉だけの引き止めは、部下の心にはあまり届きません。先にしておきたいことがあります。

変えられることと、変えられないことを分けて伝える
担当の入れ替え、仕事量の調整、相談の頻度などは、上司の判断で動かせることがあります。一方で、給与や制度、会社の方針は、上司ひとりでは変えられないことも多いでしょう。
できないことを「なんとかする」と約束するのは避けましょう。動かせることは期限を決めて実行し、動かせないことは正直に伝えるほうが、部下の信頼につながります。
話を聞いたら、小さな変化をすぐに形にする
話を聞いたあと何も変わらなければ、部下は「やっぱり言っても変わらなかった」と感じます。「来週から、確認の作業は〇〇さんと分担しよう」のように、すぐに始められることを一つ決めて、実行しましょう。
人事や自分の上司に話すときは、本人の了承をとる
異動や待遇のことなど、上司ひとりでは決められないこともあります。その場合は、「この話を人事にも相談していい?」と、本人の了承をとってから進めます。
迷っている段階の話が勝手に広がると、部下は職場の中に居場所がなくなったように感じてしまいます。
決意が固い部下は、円満に送り出す準備を
退職をはっきり決めている部下に、何度も引き止めの話をするのは、お互いにつらいものです。残ってほしい気持ちがあるなら、それを伝えるのは一回にとどめ、本人が出した結論を受け止めましょう。
部下の立場から見た引き止めの受け止め方は、退職を引き止める上司の本音で紹介しています。引き止められる側が何に迷い、何に困るのかを知っておくと、言葉の選び方が変わってきます。
避けたい引き止め方
- 「今辞めたら、みんなに迷惑がかかる」と罪悪感に訴える
- 「後任が見つかるまでは辞めさせない」と言う
- 退職の申し出を受け取らず、話を先のばしにする
- 今後の評価や待遇の話を持ち出して、考え直すよう迫る
- ほかの社員の前で、退職の話を持ち出す
退職の日取りや引き継ぎの段取りは、上司ひとりで決めずに、社内のルールを確かめながら人事と一緒に整えていきましょう。
辞めたい部下を増やさないために、ふだんからできること
サインに気づいて対応することも大切ですが、部下が「ここで働き続けたい」と思える関わりを続けることが、いちばんの予防になります。
- 頑張りを、具体的な言葉で伝える(「〇〇さんがまとめた表のおかげで、会議が早く終わったよ」)
- 任せている仕事が、チームや会社の何につながっているかを話す
- 仕事の量が一人に偏っていないか、定期的に見直す
- 困ったことを早めに言える、報告や相談のしやすい関係をつくる
- これからの働き方について、本人の希望を聞く機会をもつ
報告や相談が少ない部下との関わり方は報連相をしない部下の本音で、部下の本音全般を聞く関わり方は部下の本音がわからない上司へで紹介しています。
年上の部下の場合は、経験への敬意を言葉にすることが特に大切です。接し方のポイントは年上の部下の本音を参考にしてください。
上司がひとりで抱え込まないために
部下が辞めるかもしれないという不安は、上司にとっても重いものです。「自分の関わり方が悪かったのでは」と、自分を責めてしまう人も少なくありません。

社内の先輩管理職や人事に相談できればいちばんですが、立場上、社内では弱音を吐きにくいこともあるでしょう。職場とは関係のない人に話すことで、気持ちが落ち着き、部下への声のかけ方を考え直せることもあります。
よくある質問
優秀な部下ほど、何も言わずに辞めていくのはなぜですか?
仕事ができる人ほど、問題を自分で解決しようとして、不満も自分の中で処理しがちです。ほかの職場からも声がかかりやすいため、相談より先に決断してしまうこともあります。問題がなさそうに見える部下ほど、定期的に話を聞く時間をとりましょう。
サインに気づいて声をかけたら、かえって辞めるきっかけになりませんか?
「辞めるつもり?」と聞けば、そうなることもあります。けれども、気づいた変化を心配として伝えるなら、多くの部下は気にかけてもらえたと受け止めます。何も言わずにいるほうが、気持ちは離れていきやすいものです。
部下に「辞めたい」と言われたら、すぐに自分の上司へ報告すべきですか?
会社の決まりで報告が必要な場合もありますが、まずは本人の話を聞き、どこまで伝えてよいかを確かめましょう。まだ迷っている段階の話を本人の了承なく広げると、残るという選択肢を選びにくくさせてしまうこともあります。
入ったばかりの新人が、もう辞めたそうにしています。
入社して間もない時期は、仕事を覚えることと人に慣れることが重なり、誰でも不安になりやすいものです。教える担当を決める、短い面談をこまめに入れるなど、「困ったらここに聞けばいい」という道筋をつくってあげましょう。
まとめ
部下の様子が気になったときは、次のことを思い出してください。
- 辞めたい気持ちは、発言が減る・先の話を避ける・休み方が変わるといった変化の「重なり」に表れやすい
- サインはその部下の少し前の様子と比べて見る。ひとつだけで決めつけない
- 体調や家庭の事情のこともある。SNSや周りへの聞き込みで探らない
- 面談は「気になっていること」から始め、理由は答えやすい質問で少しずつ聞く
- 引き止めの言葉より先に、動かせることを一つ実行する
- 決意が固い部下は、本人の結論を受け止めて円満に送り出す
部下の小さな変化に気づけるのは、ふだんから部下を見ている上司だからこそです。気になる部下がいたら、まずは「最近どう?」と声をかけるところから始めてみてください。

シンパンくんから
部下が辞めるかもしれないと思うと、怖くなるよね。でも、変化に気づけた今がいちばん早いタイミングなんだ。15分の面談から、関係はまた動き出すよ。




